Japanische Klassiker mit Furigana
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こどものかなしみ
号外・少年の悲哀 他六篇
国木田 独歩
Lesen Sie 号外・少年の悲哀 他六篇 (こどものかなしみ) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.584 Zeichen · 59 Bildschirme
落葉を踏んで頂に達し、例の天主台の下までゆくと、寂々として満山声なきうちに、何者か優しい声で歌うのが聞こえます、見ると天主台の石垣の角に、六蔵が馬乗りにまたがって、両足をふらふら動かしながら、目を遠く放って俗歌を歌っているのでした。
空の色、日の光、古い城あと、そして少年、まるで絵です。少年は天使です。この時私の目には、六蔵が白痴とはどうしても見えませんでした。白痴と天使、なんという哀れな対照でしょう。しかし私はこの時、白痴ながらも少年はやはり自然の子であるかと、つくづく感じました。
今一ツ六蔵の妙な癖を言いますと、この子供は鳥が好きで、鳥さえ見れば目の色をかえて騒ぐことです。けれども何を見ても「からす」と言い、いくら名を教えても覚えません。「もず」を見ても「ひよどり」を見ても「からす」と言います。おかしいのは、ある時白さぎを見て「からす」と言ッたことで、「さぎ」を「からす」に言い黒めるという俗諺が、この子だけにはあたりまえなのです。
高い木のてっぺんで百舌鳥が鳴いているのを見ると、六蔵は口をあんぐりあけて、じっとながめています。そして百舌鳥の飛び立ってゆくあとを茫然と見送るさまは、すこぶる妙で、この子供には空を自由に飛ぶ鳥がよほど不思議らしく思われました。