Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
ともすれば、文代に気づかれぬ様に、そこへ手をやって、何か中にあるものを確めて見る。
文代は、見ぬふりをして、ちゃんと見ていた。
若しやこの男、ピストルを持っているのではあるまいか。人工瀑布に水を上げる為のモーターポンプが、やかましく轟き渡っている中で、ピストルを打ったとて、誰も気づきはしないだろうと思うと、流石に薄気味悪くなって来た。
「ホウ、これは凄い」
男が驚きの声を上げたので、ふと見上げると、生茂った造花の桜の枝越しに、菊人形の狐忠信の青白い顔がすぐ頭の上に漂っていた。
「マア怖い」
文代は実際以上に怖がって見せて、マスクの男によろけかかった。
「怖がることはありません。人形ですよ。人形ですよ」
男は文代の背中に手を廻し、彼女を抱きしめる様にした。
「もういいんです。でも、本当にゾッとしましたわ」
文代は男から離れて、外套のポケットに入れた左手の先に、注意を集中した。
彼女は咄嗟の間に、男がポケットに忍ばせていたものを、抜取ったのだ。手触りで、ピストルでないことが分った。金属性の、シガレット・ケースを少し大きくした様な容れものだ。
相手に悟られぬ様、外套のポケットの中で、そのケースを開き、指先で探って見ると、水にひたしたガーゼ様のものに、ヒヤリと触った。