Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
頓狂な、夢を見ている様な空の声が答えた。三谷はギョッとしたが、強て元気な調子で、
「何もいないじゃありませんか。向うの山の紅葉が見えている外には。君、今日はどうかして……」
といいさして、なぜかプッツリ言葉を切てしまった。
と同時に、広い浴場にこだまして、身の毛もよだつ、倭文子の悲鳴。
彼等は見たのだ。川に面した小窓の外に、一刹那ではあったが、何とも形容出来ない恐ろしいものを見たのだ。
そのものは、フサフサした白髪を逆立て、異様な黒眼鏡をかけ、その下に鼻はなくて、顔半面が真赤な口と、むき出しの鋭い白歯ばかりの、嘗て見たこともないけだものであった。
倭文子は余りの恐ろしさに、恥も外聞も忘れて、パチャンと浴槽に飛び込むと、いきなり三谷青年の裸体にしがみついた。
底の見える美しい湯の中で、二匹の人魚が、ヒラヒラともつれ合った。
「逃げましょう。早く、逃げましょうよ」
一匹の人魚が、他の人魚の首に、しっかりからみついて、口を耳にくっつける様にして、惶しく囁いた。
「怖がる事はありません。気のせいです。何かを見違えたのです」
三谷は、まだからみついている倭文子を、引ずる様にして、浴槽を出ると、小窓に駆けより、ガラッとそれを開いた。