Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
彼女はそうして、間接に、彼女の殺した老人と、頬ずりしているのかも知れない。
と思うと、何ともいえぬ恐ろしさに、ゾーッと、襟元の毛穴が立った。
盲目の様な、真の暗闇の中で、死人の怨霊が、彼女の身体をしめつけている様な気がする。彼女は、
「キャーッ」
と叫んで、棺の蓋をはねのけ、いきなり逃げ出したい衝動にかられた。だが、叫ぼうものなら、逃げ出そうものなら、立所に身の破滅だ。彼女は歯を食いしばって、我慢しなければならなかった。
不気味な屍臭は、益々強く鼻にしみて、耐え難い程になった。神経という神経が、きゅう覚ばかりになってしまったような気がする。
と、突然、異様な記憶が、彼女の鼻によみがえって来た。
オヤ! この匂いは今が初めてではない。ついさっきまで、これと全く同じ匂いをかいでいた様な気がする。変だな。一体どこで、そんな匂いがしたのかしら。……アア、そうだ。井戸の中だ。さっきまで身をひそめていた古井戸の中だ。
井戸の中にいる間は、興奮のあまり、それを意識しなかったけれど、思い出して見ると、匂いばかりではない、あの厚い蒲団の下は、決して平な井戸の底ではなかった。