Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
それなれば、倭文子にどの様な恨みがあるのかは知らぬけれど、彼の企ては、充分すぎる程成功したといわねばならぬ。世の中にこれ程残酷な責め苦が、またとあろうとは思われぬからだ。
それはとも角、倭文子の苦しみは、最早ここに書き記すのも恐ろしい程であった。
火焔は母の着物の裾に、子の洋服のズボンに、チリチリと燃え移り、避けるにも、身動きもならぬ箱の中、その上ふたを押し上げようと、力をこめれば、焼こげてもろくなった底の方が、メリメリとくずれ相で、もう棺を破ることも出来ぬ。ただ声を限りに泣き叫ぶばかりだ。
だが、その泣き叫ぶことさえも、今は不能になった。立ちこめる毒煙は、目、口、鼻を覆むせ返り咳き入って、叫ぶはおろか、息も絶え絶えの苦しみである。
無慙にも、幼い茂少年は、もう母親の見境がつかず、まるで彼女を恨み重なる仇敵でもあるかの様に、倭文子の胸に武者振りつき、柔かい肌に、けものの様な爪を立てて、かきむしり、かきむしるのであった。
そして、アア、何というむごたらしいことだ。我子の苦悶を見るにたえ兼ねた母親は、自分も死に相にうめき入りながら、無我夢中で茂の頸に両手をかけ、絞め殺そうとしたのである。