Japanische Klassiker mit Furigana
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るそんのつぼ
呂宋の壺
久生 十蘭
Lesen Sie 呂宋の壺 (るそんのつぼ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.375 Zeichen · 36 Bildschirme
「その壺、ちょっと見せてくれ」
ひったくるようにして壺をとりあげた。
なんどりとした茶釉の下から、火花が散ったようにいちめんに浮きだしている鶉斑……。肩下のあたりに、蓮華の花びらが透しになって、その中に、あるかなしかというように「王」という字が見える。底を見ると、話に聞いたとおり高い揚底で、底に曲の凹みがある。まさしくこれだ。
「これが『蓮華王』だ」
吉之丞は腹巻から錠銀をつかみだしてマレー人の手におしつけると、壺を抱いておのれの座に這い戻った。
「夢のようだ」
蓮華王の葉茶壺を膝の前に据え、吉之丞は途方に暮れて呆然と空を見あげた。
長くてあと二、三日の命。それはもうまぎれもないことだ。こんな詰りきったときに、夢にまで見た蓮華王の葉茶壺にめぐりあうというのは、どういうことなのか。
本意をつらぬいたのだから、死んでも満足とすべきなのだろうが、そんな気持にはなれない。壺を抱いて死んだら、この世に思いが残るだろう。生も死もどうでもいいと、さらりと思いあきらめていたが、壺が手に入ったら、急に死ぬのがいやになった。……そうはいっても、助かるあてはないのだ。
吉之丞はぐったりとなり、あおのけに寝て胸の上で手を組んだ、いつもの楽な姿勢をとると、ひょっとすると、明日は眼がさめないのかも知れないと思いながら、うつらうつらしだし