Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
男の学生に扮した役者は他の劇団から転じて今度新に加入した山室弘という二十五、六の学生くずれ。戦争中から慰問興行の団体などにも加わって、舞台の経験もあり、流行歌も下手ではないという評判。千代子の目には将来有望な青年俳優であるらしく思われた。自然と稽古にも興が乗って、千代子は抱かれて頬摺りなどする仕草にも、我知らず狂言ならぬ真剣味を見せはじめた。それが為か、初日の幕があいた時、その日の演芸の中では千代子の役が一番評判がよかった。男の方でも相手の熱烈な演じ方に気乗りがしたと見えて、幕になった後まで、なおも飽きずに舞台の上の仕草から思入、台詞の言い方を、いろいろ懇切に教えたり直してやったりした。
三日目の舞台に、山室はベンチの上で力まかせにぐっと千代子の身を抱きすくめ、その脣の上にいつ放すとも知れず自分の脣を押しつけたが、千代子は呼吸をはずませながら、悶きもせずにじっとしていた。その日から山室は幕間毎に女優の部屋へやって来て、千代子の鏡台の前に坐り、千代子の使う刷毛で顔を直したり、また楽屋外の喫茶店へ誘い出したりするようになった。
一座はその時丸の内で興行していた。