Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
千代子はその帰道が同じなので、田中と云う三枚目の役者を恋人にしている仲間の蝶子といつも連立って、地下鉄から浅草で東武線に乗りかえ、牛田という停車場から更に京成電車に乗りかえて高砂の駅で降りる。その道々千代子はいつも居眠りしかける蝶子を呼び起しては、うるさい程山室の話をするのであった。
「じゃ、あんた、まだだったの。わたし、もうとうに、そうだと思ってたわ。」或夜蝶子は驚いたような調子で笑った。
「だって、向で何とも言ってくれないんだもの。仕様がないわ。」
「あんた。真実山室さん好きなの。」
「好きだわ、わたし。だけれど女の方からそんな事言い出せないわ。断られると気まりがわりいもの。」
「大抵様子でわかるじゃないの。断るか、断らないか……。」
「蝶子さん、あんたの場合、どうだったの。どっちが先に言出したの。」
「どっちッて。わたしも彼氏も、どっちからも、何とも言やしなかったわ。」
「じゃ警報なしに。突発したのね。すごいわね。」
「何さ。だから大概様子でわかるって言ったじゃないの。時機があるのよ。チャンスが必要なのよ。」
そう言われてから、千代子は毎日その話をする機会を窺っていた。