Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Lesen Sie 地上 (ちじょう) von 島田 清次郎 (しまだせいじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 175.250 Zeichen · 350 Bildschirme
(ああ、このような男、このような男、このような男がこの世に生きていたとは!)
幾年の間、抑圧して来た情熱が一切の規約を越え破って冬子をわな/\顫えしめた。どうしてもじっとしていられない。手足が火のように燃えて来た。もう自分は芸妓でない。「情を売る」旅の女ではない。一人の勝れた女、一人の潜めた可能力を一斉に噴き出して、はじめて感じる恋の聖い熱情に燃えた女だ。
三日目の夜更けのことであった。冬子は生死さえ分らないような彼の動かない身体に力いっぱいしがみついて、全身、脈々と湧く焔の波に顫わせていた。鈍い半眼が、落着いたままに開いてじっと見据えた。「冬子か」
「お許し下さいまし」
「お前には両親がない筈だったね」
「は、い」
ああ、燃ゆる生命よ。沈着な根強い男の認識に根柢より燃え上がる女の生命が移った。静かに眼を閉じた。一身を献ぐる女の真情に偉大な力は根柢から揺り動かされて来た。燃えさかる烈火を蔽い包むように巨人の力が冬子を抱いた。
「わたしを一生、一生お傍に置いて下さいまし」
「置いてやる。己ももうお前がなくては空虚を感じる」
「本当ですか」
「嘘は言わぬ。明日はもうお前は芸妓ではない。