Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじょう

地上

島田 清次郎

Lesen Sie 地上 (ちじょう) von 島田 清次郎 (しまだせいじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 175.250 Zeichen · 350 Bildschirme

Aozora Bunko

二人が街角へ来たとき、街の方からけたたましい号外の鈴の音が近づいて来た。平一郎は飛びつくようにして一枚を奪った。

「和歌子さん!」

「何んですの」

「乃木将軍が殉死されたのだ!」

「そおお!」二人は号外の活字に鮮明にその事実を読み得た。

「平一郎さん!」接吻を知らない人にはただ溢れる熱情をしっかり双手を握り合うことによってのみ表わし得た。厳粛な死によって神聖にされ、祝福された、二人の恋であった。一つの時代より他の時代へ移りゆく時期に発生しがちな時代の弱点や人心の頽廃を乃木将軍の死は引きしめる力があった。二人の少年と少女にとっては生涯忘られない初恋の背景となった。

冬子が去ったあと、お光と平一郎の生活に外面上、何の変異も起こらなかった。お光は依然として勤勉な春風楼の裁縫師であり、好き母であり、穏やかな平和さを絶えず身辺に漲らしている小母さんであった。平一郎が冬子の別れに感じた悲哀もまだ直ちに彼の性格の上に表われるには彼の年が若かった。傷は伸び行く力によって何のあとかたもなく消え失せたように見えた。あるいは彼の性格の奥深くに潜んでいて時機を得て現われるのかも知れない。