Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじょう
地上
島田 清次郎
Lesen Sie 地上 (ちじょう) von 島田 清次郎 (しまだせいじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 175.250 Zeichen · 350 Bildschirme
「誰のだ、誰のだ」と言うのもあれば、「春風楼、冬子! わはっはっはっ」と怒鳴る奴もいる。平一郎は群に近寄って見た。それは自分が今朝さして来た傘であった。なるほど傘には「春風楼、冬子」と書かれてあった。哄笑している一群に対して憤怒を感じた。
「何が可笑しいのだ!」と彼は怒鳴った。一同が粛然と静まった。すると誰かが、「芸者の傘をさしている奴は誰だ!」と言った。
「己だ! 己がさして来たのだ! 文句のある奴はここへ出て、直接に言え!」
すると背後でわあっと喊声をあげた。平一郎はどこまで卑屈な奴だろうと思った。彼は堪らなくなって、展げられた傘をすぼめつつ、
「この傘は姉さんの傘だ! 己は貧乏で、姉さんのお古を使っているのだ! 分ったかい――君達は己を笑うことはよくないことだぞ!」
そして彼はまだ何か言う奴があったら擲りつけてやろうと傘を逆手にもって睨みつけた。彼の恐ろしい有様にもう誰も言わなかったが、体操の教師が「大河、ちょっと来い」と彼を銃器室へ通ずる薄暗い廊下へ連れて行った。彼は窓から見える庭の植物園の白萩の花などを見ながら黙していた。分らないことを言ったら体操教師を擲りつけて、いっそ学校中の奴を死物狂いで擲りつける覚悟をしていた。