Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじょう

地上

島田 清次郎

Lesen Sie 地上 (ちじょう) von 島田 清次郎 (しまだせいじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 175.250 Zeichen · 350 Bildschirme

Aozora Bunko

何というおだやかな静かさであろう。彼は机の前に坐って、充ちわたる静寂にひたった。外界の静寂に似ず彼は自分の内面に不思議にひろがる「あやしげな」感じを抱きしめていた。

「随分いい部屋ですわ。ほんとに大河さんは幸福ですのよ。こちらのようなお邸から学校へ通わして戴けるなんて。それに本当にこちらのお邸のようにいいお邸はないことよ。奥様は立派な思いやりの深い方ですし、旦那様だってそれはいい方ですのよ。ただ若様は少しお身体が弱くって学校なんかも怠けていらっしゃるけれど、…………」粂は快活に下松町のお玉がそうであったように時々大げさな色眼を使って話したてた。平一郎はその色眼を快く思わぬでもなかったが、何故か頼りない寂しさが全身を揺り動かして来るのをどうにも出来なかった。(母を去って来たからだ。明日食う米がなくても母の傍にさえいれば感じなくともすむ淋しさだ。)それに何とも知れぬ天野夫人への執着が湧いて来た。彼はそうした複雑な感情で窓先の山茶花の葉を眺めていた。粂は彼の耳許で、彼は毎朝起きてから自分の部屋と廊下と前庭の掃除をすること、ときどき風呂の焚きつけをしなくてはならないこと、学校から帰ったあとはもう来訪者があればその取次をしなくてはいけないと話した。