Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじょう

地上

島田 清次郎

Lesen Sie 地上 (ちじょう) von 島田 清次郎 (しまだせいじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 175.250 Zeichen · 350 Bildschirme

Aozora Bunko

そこに、丸められた、汚血のにじんだ紙くずが転がっていた。お茂ははっとしたらしかったが、非常な速力で、昨夜、悲しい暗鬱な気持で遅く帰って来てから床にはいったまでの間を反省してみるような目つきで、お茂は言った。

「これはわたしのではなくってよ」

「お茂ちゃんのでなくて誰の」

「誰なのかわたしが知っているものかね」

「ふん――」

時子は、細帯をきゅうっとしめて、ふくらんだ乳房のあたりをぽんと叩いた。叩いた拍子に時子の※絹裏の袖からころころと同じような紙屑が畳の上へ転げ落ちた。お茂の眼は輝いた。が、その輝きは輝いたことを羞じらうようにまた持前の暗い容貌に逆戻りした。時子は不意な事実の前に忌々しさをこらえねばならなかった。(昨夜、若い高等学校の学生の一群の席で、眼鏡をかけた元気のいい生き生きした髭などの少し青みがかった男が――それをすっかり忘却してしまっていたのであった!)時子はちっと舌鼓をうって言った。

「お茂ちゃんは品がいいのですからね」

お茂は辛そうに顔をゆがめて黙した。こんなとき冬子でもいてくれればと彼女は思った。お茂には、嫌だ嫌だと思う圧迫のみが強くて、その圧迫につき動かされて反抗し開拓してゆく力がなかった。