Japanische Klassiker mit Furigana
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かべのめのかい
壁の眼の怪
江見 水蔭
Lesen Sie 壁の眼の怪 (かべのめのかい) von 江見 水蔭 (えみすいいん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.253 Zeichen · 15 Bildschirme
「まァ何という出し抜けの縁談であろう」
「それがいやとなら、是非もない、改めて拙者は、そなたの手にて、毒蛇の為に咬まれよう。おう、殺されよう。死ぬ方が増しじゃ。遂げ得ぬ恋に長く苦しむよりは」
「それ程まで不恙な私をば」
人の言葉を信じるのは、まことに人なれぬ里人とて早過ぎる程に早かった。それにまた説く者の誠意の表現も、熱烈を極めた為にでもあった。もうここまでになると、言葉はどちらからも発しないのであった。
ただ青萱が、そよそよと戦ぐばかりであった。
宮の背後から、ぬっと出て来たのは、筋骨逞ましい村の若者であった。それは怪獣のような鋭い眼をして、繁りの青萱の中を睨みつめた。
執念の毒蛇の首は、未だ鈴手綱の端を咬んだまま、ときどき、ビクリ、ビクリとしているのであった。
五
勝国手は古文書を写しなどした為に、早夕方になったのに驚き、今晩は大炊之助の家に厄介になるより他なくなった。
茶と塩鮭の塩味とで煮た昆布を吸い物とし、それから、胡瓜を切って水に浮して、塩を添えて夕食を出された。それは未だ食べられたが、困ったのは酒を強いられた事で、その酒たるや、正月に造ったという濁酒で、蛆がわいているのであった。