Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かべのめのかい

壁の眼の怪

江見 水蔭

Lesen Sie 壁の眼の怪 (かべのめのかい) von 江見 水蔭 (えみすいいん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.253 Zeichen · 15 Bildschirme

Aozora Bunko

勝国手の命令で、人々手分けをして渡り口を求めに散った。この間に直芳も手帳矢立を取出して、写生すべく川端を少しく下手の方へと行ったのであった。

「あッ」

いくらか断崖の低くなっている処。下の深淵へ覗く様にして出張っている大蝦蟇形の岩があった。それに乗って直芳が下を見た時に、思わず知らず口走ったのであった。それは緑の水中に、消え残る雪の塊とも擬うべき浴泉の婦人を見出したからであった。丈にも余る黒髪を、今洗い終ったところらしかった。それからまた離れた川中に、子供の群が泳ぎ戯れてもいた。

首から下を緑青の水に浸している若き婦人。それが絵になるとかならぬとか、そうした考えも何もなかった。いきなり直芳は矢立の筆の先を墨壺に突込まずにはいられなかった。

もう少しで書き終ろうとした時に、ふいと婦人は上を見た。岩が覗くその又上から人が覗いているのを認めて、この上もない驚き方をして、水鳥が慌だしく立つ様に、水煙を立て逃げ出した。

直芳は悪い事をしたと悔いた。そうして声高く、

「胡散の者では御座らぬ。三面村へ参る者。米沢藩の御典医の一行が、薬草採りに参ったのじゃ」

そう呼んだけれど、婦人は振向いても見なかった。