Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
もの哀しい盲目の群のように、電車の終点駅で、人々は暗闇のなかの階段を黙々と昇って行った。だが、そうした人々の群のなかを歩いていると、彼にも淡い親しみと憐憫が湧いてくるようなのだった。道路の方では半鐘が鳴り「待避」と叫んでいる声がした。線路の方には朧な闇のなかを赤いシグナルをつけた電車がのろのろと動いていた。
そうした哀しい風景は、過ぎ去れば、忽ち小さな点のようになって彼の内部から遠ざかって行った。彼はひっそりとした家のうちに坐って、ひっそりとした時間と向きあっていた。どうかすると、彼はまだここでは何ものも喪失していないのではないかと思われた。追憶というよりも、もっと、まざまざとしたものがその部屋には満ちていた。それから、もっと遠いところから、風のようなもののそよぎを感じた。そこには追憶が少しずつ揺れているようだった。世界は研ぎ澄まされて、甘美に揺れ動くのだろうか。静かな慰藉に似たものがかすかに訪れて来たようだった。……だが、そうした時間もたちまちサイレンの音で截ち切られていた。庭の防空壕の中に蹲っていると、夜の闇は冷え冷えと独り悶えているようだった。