Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
そのいじらしい姿は正三の眼に映った。
正三は事務室の片隅で釦を数えていた。卓の上に散らかった釦を百箇ずつ纏めればいいのであるが、のろのろと馴れない指さきで無器用なことを続けていると、来客と応対しながらじろじろ眺めていた順一はとうとう堪りかねたように、「そんな数え方があるか、遊びごとではないぞ」と声をかけた。せっせと手紙を書きつづけていた片山が、すぐにペンを擱いて、正三の側にやって来た。「あ、それですか、それはこうして、こんな風にやって御覧なさい」片山は親切に教えてくれるのであった。この彼よりも年下の、元気な片山は、恐しいほど気がきいていて、いつも彼を圧倒するのであった。
艦載機がこの街に現れてから九日目に、また空襲警報が出た。が、豊後水道から侵入した編隊は佐田岬で迂廻し、続々と九州へ向うのであった。こんどは、この街には何ごともなかったものの、この頃になると、遽かに人も街も浮足立って来た。軍隊が出動して、街の建物を次々に破壊して行くと、昼夜なしに疎開の馬車が絶えなかった。
昼すぎ、みんなが外出したあとの事務室で、正三はひとり岩波新書の『零の発見』を読み耽っていた。