Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
手際のわるい光子はのろのろと仕事を片づけ、どうかすると無駄話に時を浪費している。清二は外から帰って来ると、いつも苛々した気分で妻にあたり散らすのであったが、その癖、夕食が済むと、奥の部屋に引籠って、せっせとミシンを踏んだ。リュックサックなら既に二つも彼の家にはあったし、急ぐ品でもなさそうであった。清二はただ、それを拵える面白さに夢中だった。「なあにくそ、なあにくそ」とつぶやきながら、針を運んだ。「職人なんかに負けてたまるものか」事実、彼の拵えたリュックは下手な職人の品よりか優秀であった。
……こうして、清二は清二なりに何か気持を紛らし続けていたのだが、今日、被服支廠に出頭すると、工場疎開を命じられたのには、急に足許が揺れだす思いがした。それから帰路、竹屋町辺まで差しかかると、昨日まで四十何年間も見馴れた小路が、すっかり歯の抜けたようになっていて、兵隊は滅茶苦茶に鉈を振るっている。二十代に二三年他郷に遊学したほかは、殆どこの郷土を離れたこともなく、与えられた仕事を堪えしのび、その地位も漸く安定していた清二にとって、これは堪えがたいことであった。……一体全体どうなるのか。