Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
私は昏々と睡りながら、とりとめもない夢をみていた。夜の燈が雨に濡れた田の面へ洩れているのを見ると頻りに妻の臨終を憶い出すのであった。妻の一周忌も近づいていたが、どうかすると、まだ私はあの棲み慣れた千葉の借家で、彼女と一緒に雨に鎖じこめられて暮しているような気持がするのである。灰燼に帰した広島の家のありさまは、私には殆ど想い出すことがなかった。が、夜明の夢ではよく崩壊直後の家屋が現れた。そこには散乱しながらも、いろんな貴重品があった。書物も紙も机も灰になってしまったのだが、私は内心の昂揚を感じた。何か書いて力一杯ぶつかってみたかった。
ある朝、雨があがると、一点の雲もない青空が低い山の上に展がっていたが、長雨に悩まされ通したものの眼には、その青空はまるで虚偽のように思われた。はたして、快晴は一日しか保たず、翌日からまた陰惨な雨雲が去来した。亡妻の郷里から義兄の死亡通知が速達で十日目に届いた。彼は汽車で広島へ通勤していたのだが、あの時は微傷だに受けず、その後も元気で活躍しているという通知があった矢さき、この死亡通知は、私を茫然とさせた。
何か広島にはまだ有害な物質があるらしく、田舎から元気で出掛けて行った人も帰りにはフラフラになって戻って来るということであった。