Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
黙ってきいている次兄は時々思いあまって怒鳴ることがある。妹の息子は飢えに戦きながら、蝗など獲って喰った。次兄の息子も二人、学童疎開に行っていたが、汽車が不通のためまだ戻って来なかった。長い悪い天気が漸く恢復すると、秋晴の日が訪れた。稲の穂が揺れ、村祭の太鼓の音が響いた。堤の路を村の人達は夢中で輿を担ぎ廻ったが、空腹の私達は茫然と見送るのであった。ある朝、舟入川口町の義兄が死んだと通知があった。
私と次兄は顔を見あわせ、葬式へ出掛けてゆく支度をした。電車駅までの一里あまりの路を川に添って二人はすたすた歩いて行った。とうとう亡くなったか、と、やはり感慨に打たれないではいられなかった。
私がこの春帰郷して義兄の事務所を訪れた時のことがまず目さきに浮んだ。彼は古びたオーバーを着込んで、「寒い、寒い」と顫えながら、生木の燻る火鉢に獅噛みついていた。言葉も態度もひどく弱々しくなっていて、滅きり老い込んでいた。それから間もなく寝つくようになったのだ。医師の診断では肺を犯されているということであったが、彼の以前を知っている人にはとても信じられないことではあった。