Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
には、どうしても出掛けようと思った。……彼は舟入川口町の姉の家にある一枚の写真を忘れなかった。それは彼が少年の頃、死別れた一人の姉の写真だったが、葡萄棚の下に佇んでいる、もの柔かい少女の姿が、今もしきりに懐しかった。そうだ、こんど広島へ行ったら、あの写真を借りてもどろう――そういう突飛なおもいつきが、更に彼の郷愁を煽るのだった。
ある日、彼は友人から、少年向の単行本の相談をうけた。それは確実な出版社の企画で、その仕事をなしとげれば彼にとっては六ヵ月位の生活が保証される見込だった。急に目さきが明るくなって来たおもいだった。その仕事で金が貰えるのは、六ヵ月位あとのことだから、それまでの食いつなぎのために、彼は広島の兄に借金を申込むつもりにした。……倉敷の姪たちへの土産ものを買いながら、彼は何となく心が弾んだ。少女の好みそうなものを撰んでいると、やさしい交流が遠くに感じられた。……それは恋というのではなかったが、彼は昨年の夏以来、ある優しいものによって揺すぶられていた。ふとしたことから知りあいになった、Uという二十二になるお嬢さんは、彼にとって不思議な存在になった。