Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
最初の頃、その顔は眩しいように彼を戦かせ、一緒にいるのが何か呼吸苦しかった。が、馴れるに随って、彼のなかの苦しいものは除かれて行ったが、何度逢っても、繊細で清楚な鋭い感じは変らなかった。彼はそのことを口に出して讃めた。すると、タイピストのお嬢さんは云うのだった。
「女の心をそんな風に美しくばかり考えるのは間違いでしょう。それに、美はすぐうつろいますわ」
彼は側にいる、この優雅な少女が、戦時中、十文字に襷をかけて挺身隊にいたということを、きいただけでも何か痛々しい感じがした。一緒にお茶を飲んだり、散歩している時、声や表情にパッと新鮮な閃きがあった。二十二歳といえば、彼が結婚した時の妻の年齢であった。
「とにかく、あなたは懐しいひとだ。懐しいひととして憶えておきたい」
神田を引あげる前の晩、彼が部屋中を荷物で散らかしていると、Uは窓の外から声をかけた。彼はすぐ外に出て一緒に散歩した。吉祥寺に移ってからは、逢う機会もなかった。が、広島へ持って行くカバンのなかに、彼はお嬢さんの写真をそっと入れておいた。……ペンクラブの一行とは広島で落合うことにして、彼は一足さきに東京を出発した。