Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
これが、広島へ来るまで彼の念頭にあった、死んだ姉の面影だった。彼はそれを暫く借りることにして、アルバムから剥ぎ取ろうとした。が、変色しかかった薄い写真は、ぺったりと台紙に密着していた。破れて駄目になりそうなので、彼は断念した。
「あんた、一昨年こちらへ戻ったとき土地を売ったとかいうが、そのお金はどうしていますか」
「大かた無くなってしまった」
「あ、金に替えるものではないのね。金に替えればすぐ消える。あ、あ、そうですか」
姉はこんど改造した家のなかを見せてくれた。恰度、下宿人はみな不在だったので、彼は応接室から二階の方まで見て歩いた。畳を置いた板の間が薄い板壁のしきりで二分され、二つの部屋として使用されている。どの部屋も学生の止宿人らしく、佗しく殺風景だった。内職のミシン仕事も思わしくないので、下宿屋を始めたのだが、「この私を御覧なさい。十万円貯めていましたよ。そのうち六万円で今度、大工を雇ったのです」と姉は云うのだった。ここは爆心地より離れていたので、家も焼けなかったのだが、終戦直後、姉は夫と死別し、二人の息子を抱えながら奮闘しているのだ。だが、その割りには、PL信者の姉は暢気そうだった。