Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
曇った緑色の岸で、何か作業をしている人の姿が小さく見える。あの岸も、この橋の上も、彼には死と焔の記憶があった。
午後は基町の方へ出掛けて行った。そこは昔の西練兵場跡なのだが、今は引揚者、戦災者などの家が建ならび、一つの部落を形づくっている。野砲聯隊の跡に彼の探す新生学園はあった。彼は園主に案内されて孤児たちの部屋を見て歩いた。広い勉強部屋にくると、城跡の石垣と青い堀が、明暗を混じえてガラス張りの向うにあった。
そこを出ると、彼は電車で舟入川口町の姉の家へ行った。
「あんたの食器をあずかってあるのは、あれはどうしたらいいのですか」
彼が居間へ上ると、姉はすぐこんなことを云いだした。
「あ、あれですか。もう要らないから勝手に使って下さい」
食器というのは、彼が地下に埋めておき、家の焼跡から掘出したものだが、以前、旅先の家で妻が使用していた品だった。姉のところへ、あずけ放しにしてから五年になっていた。……彼はアルバムが見せてもらいたかったので、そのことを云った。どの写真が見たいのかと、姉は三冊のアルバムを奥から持って来た。昔の家の裏にあった葡萄棚の下にたたずんでいる少女の写真は、すぐに見つかった。