Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme
すると、間もなく彼の妻が喀血したのだった。四年前の秋のことであった。妻の病気によって、あのとき、彼は自らの命を繋ぎとめたのかもしれなかった。
久し振りに爽やかな光線が庭さきにちらついていたが、彼は重苦しい予想で、ぐったりとしていた。再検査の紙が彼のところにも送附されて来たのだった。それは、ただ医師の診断を受けて、書込んでもらえばよかったのだが、そういうものが舞込んで来ることに、彼は容易ならぬものを感じた。彼は昨日も訪れたばかりの妻のところへ、また出掛けて行きたくなった。
街は日の光でひどく眩しかった。それは忽ち喘ぐように彼を疲らせてしまった。だが、病院の玄関に辿り着くと、朝の廊下は水のように澄んでいた。ひっそりとした扉をあけて、彼が病室の方へ這入って行くと、妻は思いがけない時刻にやって来た彼の姿を珍しげに眺め、ひどく嬉しそうにするのであった。その紙片を見せると、妻はしばらく黙って考えていた。
「診察なら、津軽先生にしてもらえばいいでしょう」と、妻はすぐにまた晴れやかな調子にかえった。
「お天気がいいので訪ねて来てくれたのかと思ったら、そんなことの相談でしたの」