Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme

Aozora Bunko

と妻は軽く諧謔をまじえだした。「御飯を食べてお帰りなさい、久し振りに旦那さんと一緒に御飯なりと頂きましょうよ」

妻は努めて、そして無造作に、いま重苦しい考を追払おうとしていた。……赤いジャケツを着た、はち切れそうな娘が、運搬車を押して昼食を持って来た。糖尿試験食の皿と普通の皿と、ベッド・テーブルの上に並べられると、御馳走のある試験食の方の皿から、普通食の皿へ、妻は箸でとって彼に頒つのだった。

翌日、約束の時間に出掛けて行くと、妻のところに立寄った津軽先生は、軽く彼に会釈して、廊下の外へ彼を伴なって行った。医局の前を通りすぎて、広い部屋に入ると、彼は上衣のボタンをはずした。妻のひどく信頼している津軽先生は、指さきから、ものごしにいたるまで、静かにととのった気品があった。一度は軍医として出征したこともあるのだが、荒々しいものの、まるで感じられない人柄であった。その、いつも妻の体を調べている指さきが、いま彼の背を綿密に打診していた。すると、かすかに甘えたいような魔術が読みとられた。津軽先生はペンを執って、再検査の用紙の胸部疾患の欄に二三行書込んで行った。