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Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme

Aozora Bunko

目がさめると、もう頼子の姿はなかった。しかし、はじめての経験の記憶はあまりにもなまなましく、わけのわからない恐怖が彼をおそっていた。彼はその日荷物をまとめ店を出ると、二度と店には行かなかった。ただ、逃げねば、とだけ思いつづけていた。

あれから、頼子とは一度も逢っていない。次に店の前を通ったのは一年以上もたってからだったが、店は隣の大きな古着屋の一部にかわっていた。奇妙なかなしみにみちびかれて歩み寄ったその邸も、表札がかわっていた。頼子は行方不明だった。

でも、それももう古い夢のような遠い記憶、遺棄された古い記憶の一片にすぎない。平然と挨拶をし、平然と別れる、いまはそれができる自信がある。いまさらどうということもないのだ、と彼は思った。

頼子は少女の頭ごしにまだちらちらと彼をながめ、無言の微笑をおくっている。少女は頼子の娘なのか。十歳よりは上だろう。満で十二くらいだろうか。

突然、彼は少女の裸の肩に目を吸われた。透明な、巨大な波に似たものが彼をつつみ、彼は、動くことができなかった。――満で十二。凝然と、彼は口の中でいった。あれから、まる十三年。

小さな蝶のような形をしたあざが、少女の右の肩にあった。