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Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆうがおのもん

夕顔の門

吉川 英治

Lesen Sie 夕顔の門 (ゆうがおのもん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.956 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

云われる迄もなく、兵庫は疾くから知っていたので、その間も、何の表情もうごかさない。――そしてただ一言、

『いや、成らぬ。何と云われようが、武士の然諾、傷負を渡すことは断じて相ならぬ』

と、同じ言葉を、重ねただけであった。

楠平の義兄、尾形周平は、さっきから眼を燃やして、兵庫の顔を睨めつけていたが、

『もう、こんな分らぬ人間に、物を云うな。云うだけ無駄だっ』

と、罵って、

『駈け落ち者の片方を、女房に持って、何ともせぬ神経へ、われわれの武士道を、云って聞かせても始まるまい。――この上は、刀にかけても、渡さぬというのか否か。それだけ聞こう』

と、身を開いて、ぱっと刃を構えながら云い放った。

周平が、そうしたので、他の者も、さっと身構えを変えた。当然、相手がふいに、抜打ちに来るものと計ってである。

だが兵庫は、眉も動かしてはいない。ただ微かに苦笑を唇元にながして、

『元より、刀にかけても!』

と云った。

『――う、うぬッ』

周平が振り込んだ一薙ぎは、斜めに、門の柱へ斬りこんでいた。――途端に、中へ隠れた兵庫の影の代りに、門の扉が、風を孕んで、どんと閉まった。

『叔父御、背を貸せ』