Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
」
と、久左衛門は気の毒そうにいう。
「もうこんなになっちゃ、東京へ帰って隣組の人達と一緒に、餓え死する方がよござんすわ。帰りましょうよ。」
と、妻は私にそっという。帰る決心のついたことは良いことだ。この夜、妻は衣類を巻いて隣家の宗左衛門のあばの家へ裏からこっそり出ていった。そして、戻って来てから、
「宗左衛門の婆さん、宗左衛門の婆さん。」と嬉しそうに呟いている。話はこうだ。妻が一俵四百円で米を売ってはくれまいかと頼むと、この寡婦は眼を丸くぱちぱちさせていてから、暫くして、
「罰があたる、罰があたる。」とそう二言いって顔を横に振ったそうだ。「そんな高い金では売られない。供出すると六十円だぞ。それに四百円――罰があたる、罰があたる。」とまた云った。
「それだって、お米が買えなけれやあたしたち、餓え死するわ。売って下さいよ、四百円でね。」
「売られん売られん。この間も常会で、二百円までなら闇じゃないということになったでのう。おれは闇は大嫌いだ。百五十円なら一俵だけだと、何とかなるが。」
「でもそれじゃあんまりだわ。じゃ、三百円。」と妻は云った。
横から、東京へ嫁入して手伝いに戻っている娘が聞いていて、妻の持って来た衣類を見ると、「欲しいのう。