Japanische Klassiker mit Furigana
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だいどうじしんすけのはんせい
大導寺信輔の半生
Lesen Sie 大導寺信輔の半生 (だいどうじしんすけのはんせい) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.611 Zeichen · 26 Bildschirme
彼は貧困を脱した後も、貧困を憎まずにはいられなかった。同時に又貧困と同じように豪奢をも憎まずにはいられなかった。豪奢をも、――この豪奢に対する憎悪は中流下層階級の貧困の与える烙印だった。或は中流下層階級の貧困だけの与える烙印だった。彼は今日も彼自身の中にこの憎悪を感じている。この貧困と闘わなければならぬ Petty Bourgeois の道徳的恐怖を。……
丁度大学を卒業した秋、信輔は法科に在学中の或友だちを訪問した。彼等は壁も唐紙も古びた八畳の座敷に話していた。其後へ顔を出したのは六十前後の老人だった。信輔はこの老人の顔に、――アルコオル中毒の老人の顔に退職官吏を直覚した。
「僕の父。」
彼の友だちは簡単にこうその老人を紹介した。老人は寧ろ傲然と信輔の挨拶を聞き流した。それから奥へはいる前に、「どうぞ御ゆっくり。あすこに椅子もありますから」と言った。成程二脚の肘かけ椅子は黒ずんだ縁側に並んでいた。が、それ等は腰の高い、赤いクッションの色の褪めた半世紀前の古椅子だった。信輔はこの二脚の椅子に全中流下層階級を感じた。同時に又彼の友だちも彼のように父を恥じているのを感じた。