Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.722 Zeichen · 286 Bildschirme
「おや、どちらへおいでになったでしょう」
櫛箱をさげたまま、ぼんやり立っていると、お雪が先へ入って、
「風呂にでもおいでになったのか知ら。まあ、お入りなさい、浅吉さん」
そこで二人は入りました。浅吉はぼんやりと櫛箱をそこに置いて、炬燵の前にかしこまっていると、お雪は戸棚をあけて行李を取り出し、その中から、あれか、これか、と書物をさがしました。
「お雪さん」
それを、ぼんやり見ながら浅吉が言葉をかけたものですから、お雪は本をさがしながら、
「はい」
「あの、お雪さん、済みませんが、油を持っておいででしたら、少し分けて下さいませんか……頭へつける油を」
「油ですか、ええあります、あります、油なら上等のがありますよ」
「切らしてしまったものですからね、どうぞ、少しばかり」
「油なら上等の椿油がありますよ」
「椿油ですか」
「ええ」
「それは結構ですね」
「それも本物の大島の椿油なんですよ、伊豆の伊東の人からいただいたのがありましたから、それを持って参りました、まだたくさんあります」
「そうですか、大島の椿油なら本物です、ずいぶん、椿油といってもイカサマものがありますからね」
「それにね、髪へつけるばかりじゃありません、刀の油とぎをするのに、椿油がいちばんいいんですってね」