Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.722 Zeichen · 286 Bildschirme
机竜之助もまた、その時、ずんずんと進んでいた足をとどめて立っていると、
「お内儀さん――お内儀さん、お迎えに参りましたよ、お一人歩きをなさると、お危のうございますよ」
甲に高い浅吉の呼び声は、感情もまたたかぶって、沼のほとりを、あちらこちらとさがし廻っている様子が、なんとしても穏かには響きません。
「お内儀さあ――ん……」
聞いていると、どこまでも嫉みを持ってものを追い求める声です。
「ねえ、先生……」
後家さんは、半ば恐怖の色を以て、竜之助にすがるように、
「あれは、うちの浅公ですよ……御存じでしょう、わたしの雇人ですが、このごろ、どうしたものか、わたしを恨んでいます……恨んではいるけれども、口に出しても、手に出しても、何もすることはできない意気地なしなんですが、ああいう意気地なしが思いつめると、また何をしでかすかわかったものではありません……この間の晩も……」
といって、後家さんの唇の色が変って、舌がもつれました。
「ねえ、先生、この間の晩、夜中に、どうも変ですから、ふいに眼がさめて見ますとね、あの野郎がわたしのこの咽喉をおさえて、こうして……わたしを絞めようとしていたんですね、吃驚して、起き直って、わたしが、とっちめてやりますと、泣いてあやまりましたが、あんなのがかえって怖いのかも知れません。