Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 159.272 Zeichen · 313 Bildschirme

Aozora Bunko

自分の頭に巻き起るさまざまの幻想を、いちいち事実と混合してしまうこともあれば、不断の脅迫感に襲われて、あらぬ敵を有るように妄信していることも限りはないのだから、狂人のいうことを、そのままに取り上げるわけにはゆかないが、さきほど言ったことの浅ましさが、こうして見ると、いよいよ身にこたえる。罪だ! と駒井甚三郎は戦慄して、怖れを感じました。

この時です、女が眼を醒ましたのは。女が眼を醒まして、自分の眼前に光をさしつけて、自分を覗いている人のあることを悟ったのは。

それと気がつくと女は、嫣乎と笑い、

「いつお帰りになったの……」

「いま」

「そうですか。わたし、あれからズット寝通してしまいました、ちっとも眼が醒めませんでしたのよ、ずいぶんよく寝てしまいましたわね。いったい、もう何時でしょう」

「もう、日が暮れてしまったよ」

「誰も尋ねて来やしなくって? 誰もわたしを追いかけては来ませんでしたか」

「誰も来た様子はありません」

「誰が来ても、いわないようにして下さいね、どんな人が尋ねて来ても、わたしを渡さないで下さいね、いつまでもここへ隠して置いて頂戴」

「…………」

「もし、あなたが、誰かにわたしを渡してしまえば、わたしはまたその人の玩具にされてしまいます……あなたがもし、わたしをかわいそうだと思召すならば、ここへ置いて下さい