Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.962 Zeichen · 145 Bildschirme
今このところに鬱屈せしめられている、当の貴公子は、まさにその人であるに相違ない。
兵馬は今はじめて、その人を見、まず煙に巻かれてしまって、言句が出ないのです。
たとえば、この人は、初対面の自分をつかまえても呼捨てであるが、いわゆる「新お代官」の胡見沢をつかまえても呼捨てであり、のみならず尾州家を呼ぶにも同じく呼捨てであり、談が長州、薩摩の大守のことに及ぶと、これらの大名をつかまえ、自分の家の子のように呼捨てにして憚らないことのみならず、江戸の将軍一族に対しても、或いは家茂がと呼び、慶喜がと呼んでいる。それが夜郎自大でするような、衒気にも、高慢にも響かないで、いかにも尋常に出て来る。さながら、そう呼んで差支えないだけの家に生れた子が、そう呼んでいる通りの自然にしか響かないのです。
おそらく、この貴公子の唇頭からは、日本の国の中では天皇御一人に対し奉りてのほかは、色代を捧ぐる必要のない、御血統に生れ給うたお方ではないかと思われるほど、それほど自然に、この貴公子の尊大な言語挙動が、兵馬の耳と眼に、尋常に映じ来ることであります。
そこで、この貴公子に拉せられた兵馬は、宮川を前にした大きな一構えの中へ引張り込まれてしまいました。