Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.484 Zeichen · 60 Bildschirme
と居直った時に、この捕方は早速に相手の利腕をむんずと掴んだつもりでした。ところが掴んだつもりの相手の利腕を掴みそこねてしまったのが意外です。自分ながら腕の狂い方の激しいのに一時、あっとしたが、その掴んだ手ごたえがさっぱりなかったので、はっと狼狽したのも実は無理がない、合羽の下に当然ひそんでいなければならない右の腕が、その相手の旅の男の肩の下に有合わさなかったのです。
それは、あえて懐ろ手をしていたわけでもなければ、その激しい掴みかかりを引っぱずしたという次第でもない、本来、この旅の男には右の腕がなかったのです。いかな名探偵といえどもないものは掴めない。
有るべく予期して無かったというのは見込違いではない。誰でも、普通の人間である限り、この合羽の下に二本の腕がある、一方が右腕であれば、一方は当然左腕であることは常識になっている――ところが、この旅の男には、取らるべき利腕の右が存在していなかった。そこでまず殺してかかるべき利腕を殺すことができないのみならず、その掴みそこねたこっちの破綻を透かさず泳がせて置いて、間一髪に摺り抜けてしまったという早業になるのです――摺り抜けた途端が、すでに走り出したことになる。