Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
音はそれだけのものですが、不思議なことには、この笛が鳴りはじめてから、海上が少しずつ物騒がしくなってきました。前の大雀というのを吹き終った頃に、墓石の上あたりを低く、いくつもの小鳥が群がって来ました。
中雀を吹き出してから、それが一層多くなって、ほとほと、茂太郎と、兵部の娘の身辺にまで、まつわるかのように見えましたが、黄足というのを吹いた時分には、あるものは茂太郎の肩の上まで来てとまろうとしました。
「茂ちゃん、もう、およし、ホラ、こんなに鳥が集まって来たわ」
「みんな千鳥なのよ」
ここに於て知る、つまり、千鳥の笛といったのは、風流千鳥の曲というようなものではなく、千鳥の啼く音そのものを模していたのです。それが真に迫ったから、かれらの夜のねぐらを驚かして、海上を物騒がしいものにし、そうして、ここまでおびき寄せられて来たものに相違ない。これは茂太郎の技術として、今にはじまったことではないのだが、せっかく呼び寄せられた小動物は、火事もないのに半鐘を打たれたような気持で、まだ火元と覚しいところを離れきれないで騒いでいるらしいのを、兵部の娘が気の毒に思ったのでしょう。