Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
ようやくにして被害地のところまで来て見ると、それは申すまでもなく戦場同様の有様であります。消防に出陣した人のすべては、まだ一人も退却したものがないようです。
何事でしょう、火はもう鎮まったのに、人の面色にまだ険悪の色が消え失せないのは。
険悪ではない、不安の憂色です。憂えの色が、火の光と、働きの疲労に彩られて、それで険悪に見ゆるのでした。
しかし、険悪にせよ、不安にせよ、漲り溢れている人々の面の憂色は、拭うことができません。それは誰とて、火事場へ来てのん気な面をしている者もなかろうけれど、とにかく一段落ついてみれば、ホッと一息した安心の表情が多少現われても悪くはないはずですが、それがありません。
緊張も、ある程度以上は罪悪です。人生そのものが、さながら戦場であるとはいえ、人間そのものが、いつも緊張のみしてあるべきはずのものではないのです。緩慢もなければならん、放笑もなければならん、余裕もなければならん。
ところが、この人々は、火は消えたけれども、消して消しきれない非常がまだ残っているようです。
それもそのはず、火事よりもなお非常な事変が一つ残されているのです。