Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
かくて兵馬は無事に相応院へと帰って来ました。そこで燈火をかかげて、冷えたお茶漬をさらさらと掻込んでしまったが、そのまま床をのべて休む気にもならないで、何やら取りつかれたもののように、膳を前にしてぼんやりと考え込んでいるのです。
お雪ちゃんに行かれた物淋しさ――のみではありません、今晩はなんとなく、何かを取落して来たような気持がしてなりません。
ホッと息をついて、眼の前の松の金屏風をじっと眺めていましたが、鶏が鳴く声に驚かされて、さてと立ち上って、寝具をのべて――それは以前、机竜之助が隠れていて、かわいそうに貸本屋の政公を手ごめにした一間なのです。
そこで手早く衣類を改めて枕について、まだ眠りもやらでいる時分のことでした、外で、
「モシ」
これには兵馬も聞き耳を立てないわけにはゆきません。
いったん枕へつけた頭もろともに、半身を持上げていると、
「モシ」
戸外でするは女の声。
もし兵馬が竜之助であったならば、これは当然、政公が甦って恨みに来たものと聞いたでしょう。或いはまた兵馬が神尾主膳であるならば、藤原の幸内が迷って出たと思うよりほかはないような突然の声でしたけれど、物の怨霊の恨みを受ける覚えのない兵馬は、その現実の声に耳をすますと、