Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme
隠居は石を卸しながら、ちょいちょい酒盃を手にするが、最初から手を触れないでいた神尾、
「ここはぜひとも切らなければ」
と言って一石、その手が思わず盃にさわる。
我知らず唇のところまで盃を持って来て、はじめて気がつき、
「あっ」
と苦い物でも噛んだように、下へさしおいて、
「ともかく、切った以上は繋いでおく」
隠居は考え込んで、
「弱りましたな」
「これで局面が一変」
神尾は喜んで、再びその手が無意識に盃の上へ下りる。
「さあ」
と隠居が、いたく考え込んでいる。得意になった神尾が、知らず識らず盃を唇のところへ持って来て、
「あっ」
また熱い物でも触れたように、慌てて下へ置く。
「そうなりますと、絶体絶命、劫に受けるより手がなくなりました。上手に向っての劫は大損でございますが、仕方がありません」
隠居は窮々として受身である。神尾は劫を仕掛けて、いよいよ有利と見える。もはや、充分に死命を制したつもりで得意になると、三たび、その手が盃に触れる。唇のところまで持って来て、
「いや、これは違った」
苦々しい面をしていると、気がついた隠居が、
「これはこれは、御酒が冷えましたでございましょう、お熱いのを換えて差上げましょう」