Japanische Klassiker mit Furigana
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きじゅつこうあんぎょう
奇術考案業
長谷川 伸
Lesen Sie 奇術考案業 (きじゅつこうあんぎょう) von 長谷川 伸 (はせがわしん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.145 Zeichen · 9 Bildschirme
砂地がすっかり心を動かしてきたので、掻抓んで特長だけを話した。
「千両だね。よろしい買うよ――だが、製作は、どうすればいいかな」
「それは実費で僕が引きうけるよ、僕だって考案者としての興味が旺盛なのだ、他人に任したくないからね」
手附に二百円とって、製作には二十里ほど先の都会へ行き、そこで試験製作という触れ込みでつくらせた。出来あがりは予期のとおり、一点の欠けた箇所もなかった。
弥兵衛は、これでまず当座の生活費が出来たので、女房には五百円ポンと渡して、久しぶりに遊びもしてみた。
あれ以来、たよりのなかった砂地省造が、一敗地に塗れた様子は新聞の商況面で知れた。さてはいよいよあの金庫をつかうなと思うと、ことの善悪よりも考案の成功が気遣われた。
「君、いつかのお礼だ」
こっそり夜やってきた砂地が、証券で価格三百円ほどのものをそっと置いて帰って行った。後で聞くと彼はその足で土地を棄てて他国へ出たのだそうな。弥兵衛の考案は役に立ったのである。
三百円、思いもかけず手にはいって、弥兵衛は喜ぶ筈だったが悲しんだ。自分のしたことが悪事の片棒をかついだと思うと、その三百円が汚らしく思えた。