Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.954 Zeichen · 24 Bildschirme
「あ、冗、冗談じゃ無いぜ、もう嫁が来るというのに、肝腎の花聟がいなくなってどうするんだ」
「だから、頼むよ、ほんのちょいと」
「待ってくれ、待ちなよ、おい」
友吉は必死に止めましたが、それを振り切った綾麿は、羊羹色の借着の紋付を着たまま、憑かれたもののように、もう暗くなった往来へ飛出してしまったのです。
後の騒ぎ――聟がいなくなった祝言の始末の悪さは、皆様の想像に任せるとして、浅草阿部川町から、本所の枕橋まで、折からの良い月に照らされて、綾麿は酔っ払いのように、滄浪として飛びました。
頭の中は、雑念の渦が巻きます。浄らかな観音様の御像と、可愛らしい香折の顔と、二つ巴になって、果てしもなく綾麿の眼の前を駈けめぐるのです。
枕橋へ着いたのは、もう八時過ぎだったでしょう。古金屋の家は直ぐにわかりました。橋の側で広い庭のある家、庭にはまだ仏像を焼いた火がクワッと燃え残って、四方には古金屋らしく、得体の知れない古物が、山の如く積んであります。
捜して見るまでもなく、火の側に滅茶滅茶に投り出してあるのは、仏体を入れた俵でしょう。月の光に覗くと、金箔を置いた御仏の足や手や、光背や瓔珞やが、浅ましくも散乱して居ります。