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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.954 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

ところが、驚いたことに、綾麿が頬摺りしていたのは、百観音中にも一二の名作と言われる、天狗長兵衛作るところの、世にも尊い仏様だったのです。

香折の胸の中には、不思議なものが芽生え始めました。観音様と頬摺りする男への、ほのかな同情と言いましょうか、やるせない好奇心と言いましょうか、綾麿の顔に浮んでいた、高貴な陶酔と、夢見るようなやるせなさが、処女心をすっかり掻き乱してしまったのです。

それは、観音様の冷たい頬から男の頬を引離して、自分の温かい頬を持って行きたい、隠れた衝動であったかも知れません。兎も角も、それを機会に、香折は恐ろしい勢で、積極的に綾麿に接近し始めたのでした。

一方南郷綾麿の五つ目行も、その頃から少しずつ始まりました。半歳に二度、一と月に一度、十日に一度、三日に一度、そして毎日と、それは加速度的に頻繁になって、綾麿が二十歳になった頃は、それはもう抜き差しのならぬ一つの勤めになり、強迫観念を伴う一つの仕事になっていたのです。

香折の綾麿に対する関心も次第に深まって、その頃母親を喪って、たった一人になった綾麿は、洗濯から綻びの繕いから、到頭三度の食事までも、香折の世話になるようになって来たのです。