Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.830 Zeichen · 24 Bildschirme
東野南次は黙って首を垂れました。疑う余地もありません。幽里子が命をかけた恋人は、何んと恋文を代作した、東野南次その人だったのです。
「東野先生――私はこの手紙を見付けましたので、ついでに娘の日記も読んで参りました。何処かの講演で先生にお話を聞き、それから思いつめたようで御座います」
「――――」
「それから先生のお書きになったものを全部買い集めて読んだ上、いろいろ考え迷った揚句、先生のところへ手紙を書いて頂きに参った様子で御座います」
礼子の静かな説明も、東野の耳にはもう入りません。
「私は、私はそんな値打のある人間ではない、私は愚劣で野蛮で、仕様のない人間です、あの清らかな幽里子さんの愛に値するような人間ではありません」
「まア、先生」
「私はこれっきり姿を隠します。幽里子さんには宜しく仰しゃって下さい」
不意に起上って入口の方へ歩いて行く東野南次、その憑かれたような姿を見ながら、母親の礼子には止める術もありませんでした。
が、扉を開けた時、東野は凝然と立止りました。そこにはまだ治り切らない幽里子が、大きな悲しみに打ちひしがれて、大きな眼を見開いたまま立っているではありませんか。