Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.841 Zeichen · 22 Bildschirme
の水も呑んだ強か者。洗い髪か何んかで、椎茸髱の小母さん方を睨め廻しながら、長局で、八文字を踏む人柄ですが、それが退屈と慢心で毎日の生活を持て余している大膳正を、どんな具合に教育したかは大方想像の出来ることであります。
三年目にはもう名君振りの偽装をかなぐり捨てて、歌舞音曲と酒池肉林の生活に沈湎して居りました。お金の方の指南で、大膳正は何時の間にやら、曾ての柳原式部正の徳川宗春のような、通人大名になりすましていたのです。
併し、滑らかな洒落を言ったり、渋い小唄を聴いたりする、末梢的な通の遊戯が、何時まで田舎大名の大膳正の興味をつなぐ筈もありません。三十を越したこの暴君は、お金の方の手綱を振り切って、一目散に強烈な刺戟へ、野性的な歓楽へと陥ち込んで行ったのもまた無理のないことでした。
其処へメキメキと頭をもたげたのは、愛臣三文字紋弥でした。この男はまだ三十二三で、主人の大膳正と似寄りの年でしたが、昔将軍家治に取入った田沼主殿頭意次のように、美男で弁舌が巧みで、その上これは――古今の佞臣に共通の特色ですが、曾て人と争うことなく、かりそめにも腹を立てるということを知らぬ珍しい性格の持主だったのです。