Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Lesen Sie 契りきぬ (ちぎりきぬ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.757 Zeichen · 66 Bildschirme
彼はうというような声をあげ、身をひきながら後ろへ振返った。おなつはぴったりと寄り添い、息を喘がせ、全身をわなわなとふるわせた。
「大丈夫だ、追って来る者はないようだ」
「どうぞ早く、ここからお伴れ下さいまし、大勢で必ず追ってまいります、捉えられましたら、わたくし死んでしまいます」
「家まで送ってあげよう、どこです」
「は、あのずっと、遠国でございます」
おなつは声までおののいていた。
「――ここにはしるべもございません。わけがあって、騙されまして、ああもう、どう致していいか……」
「これを肩へ掛けておいでなさい」
彼は絽の夏羽折をぬぎ、それをおなつの背にかけてやった。それから小さな体ぜんたいを、自分と傘とで庇い隠すようにしてなにごともなかったふうな足どりで歩きだした。
「ともかく私の家までゆくことにしましょう、黙っておいでなさい、ああこれは、――はだしですね、その足どうかしたんですか」
「夢中でとびだしまして、途中でなにか踏んだらしゅうございますの」
「それは辛いでしょう。――履物屋も閉めてしまったろうし、駕では追手にてがかりがつくだろうし、負ってゆくわけにもいかないし」