Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Lesen Sie 契りきぬ (ちぎりきぬ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.757 Zeichen · 66 Bildschirme
正二郎さま、あなたは本当にたくさん、いい物をみつけて下さいましたわ、あたしの泣いたのが、悲しいだけではなかったということ、あなたにはわかって頂けますわね、――なつはこれまでより元気で、強く生きてまいりますわ、みていて下さいましね。
その夜はずっと降りつづいたのだろう、朝になると山も谷もいちめんの雪で、珍しく三寸あまりも積っていた。
おなつは鷹二郎を抱いて、帰ってゆく精之助を道まで見送った。彼はいかにも別れが惜しいらしく、幾たびも子供を抱き取ったり、こんどこそ待っていてくれと念を押したりした。おなつはできるだけ明るい調子で、彼の眼をみつめ、微笑して、待っていますと誓った。
「――では近いうちに」
精之助はやがて思いきったというふうに口を一文字にした笑いかたで、こちらをみつめながら別れを告げた。
「――四五日のうちには来る、それまでおまえも坊やも、気をつけてね」
「はい、あなたさまもどうぞ」
「――ではゆくよ」
彼は雪のなかを大股に去っていった。もう振返らなかった。逞しい肩をみせ、しっかりとした、大きな歩調でずんずん去ってゆく。おなつは鷹二郎を抱きあげ、そのうしろ姿を指さしながら云った。