Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おんなとぼうし

女と帽子

豊島 与志雄

Lesen Sie 女と帽子 (おんなとぼうし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.614 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

それからとにかく増資のことを大体聞き出しましたが、そういう風ないきさつは、実家にいる時、また結婚先でも、いろいろ耳にしたことがありましたのに、その時だけは、へんに憤慨めいた気持がわいてきました。

いろいろなことで、むしゃくしゃし、腹が立ち、自分自身が穢らわしくなり、そして今村さんの少し取乱した様子を見ますと、あの時のことが、あの昔の燈籠流しの晩のことが、むず痒いような気持で新たに思い出されました。そこに、なにか、ぽつりと火がともってるようです。ぽつりと、遠く美しく火がともっています。私は夜の蝶のようにその方へ飛んでいきたくなりました。珍らしく、ほんとに珍らしく、涙が出てくると、それに自分で腹が立ちました。私はどうかしていたのでしょうか。生涯何一つ美しい思い出を持っていない私です。あの遠い火を失いたくない。そうして私は、今村さんと一緒に海を見に行きたくなりました。今村さんを誘いました。ところが、その日、歌舞伎に行く筈だったのを忘れていました。私一人ならいいけれど、平賀さんと一緒だったのです。その腹癒せに……というよりも何だか逆上せて、今村さんと一緒に一夜過してやれという気になりました。