Japanische Klassiker mit Furigana
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おばすて
姨捨
堀 辰雄
Lesen Sie 姨捨 (おばすて) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.351 Zeichen · 20 Bildschirme
三
しかし、寺に数日籠って、父の無事を一心になって祈っている間も、どうかすると女にはあの立派な男車がおもかげに立って来てならなかった。「若しかしたら――」が、女はそんな考えを逐い退けるように、顔を振って、ひたすら父の無事を祈っていた。
丁度その頃、父は遠い常陸の国に、供者もわずか数人具したぎりで、神拝をして巡っていた。一行はその日の暮、一つの川を真ん中に、薄赤い穂を一面になびかせている或広々とした芒野を前にしていた。その芒野の向うには又、こんもりと茂った何かの森が最後の夕日に赫いていた。
国守は、なぜか知ら、突然京に残した女の事を思い出していた。そうして馬に跨ったまま、その森の方へいつまでも目を遣っていた。そのうち何処から渡って来たのか、一群の渡り鳥らしいものが、その暮れがたの森の上に急に立ち騒ぎ出した。国守は、その鳥の群がようやくその森に落ち著いてしまうまで、空けたようにそれを見つづけていた。
三
それから五年立った秋、父は漸っと任を果して、常陸から上って来た。兎に角無事に任を果して来たと云うものの、父はいたいたしい程、窶れていた。そうしてもう、こん度の上京かぎり、官職からも身を退いて、妻や女を相手に、静かに月日を送りたいと云うより外は何も考えないでいるらしかった。