Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こどものびょうき

子供の病気

芥川 竜之介

Lesen Sie 子供の病気 (こどものびょうき) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.633 Zeichen · 12 Bildschirme

Aozora Bunko

先生はそう云って帰って行った。

自分は夜も仕事をつづけ、一時ごろやっと床へはいった。その前に後架から出て来ると、誰かまっ暗な台所に、こつこつ音をさせているものがあった。「誰?」「わたしだよ」返事をしたのは母の声だった。「何をしているんです?」「氷を壊しているんだよ」自分は迂闊を恥じながら、「電燈をつければ好いのに」と云った。「大丈夫だよ。手探りでも」自分はかまわずに電燈をつけた。細帯一つになった母は無器用に金槌を使っていた。その姿は何だか家庭に見るには、余りにみすぼらしい気のするものだった。氷も水に洗われた角には、きらりと電燈の光を反射していた。

けれども翌朝の多加志の熱は九度よりも少し高いくらいだった。Sさんはまた午前中に見え、ゆうべの洗腸を繰り返した。自分はその手伝いをしながら、きょうは粘液の少ないようにと思った。しかし便器をぬいてみると、粘液はゆうべよりもずっと多かった。それを見た妻は誰にともなしに、「あんなにあります」と声を挙げた。その声は年の七つも若い女学生になったかと思うくらい、はしたない調子を帯びたものだった。自分は思わずSさんの顔を見た。