Japanische Klassiker mit Furigana
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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 孤島の鬼 (ことうのおに) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 181.795 Zeichen · 359 Bildschirme
うっかりしていると、足が辷って、横ざまに水に浮き相な気がするのだ。
諸戸は私の腹の所に手をまわして、しっかり抱いていて呉れた。真の闇で、二三寸しか隔っていない相手の顔も見えなんだけれど、規則正しく強い呼吸が聞え、その暖かいいきが頬に当った。水にしめった洋服を通して、彼のひきしまった筋肉が暖く私を抱擁しているのが感じられた。諸戸の体臭が、それは決していやな感じのものではなかったが、私の身近かに漂っていた。それらの凡てが、闇の中の私を力強くした。諸戸のお蔭で私は立っていることが出来た。若し彼がいなかったら私はとっくの昔に水におぼれてしまったかも知れないのだ。
だが、増水はいつやむとも見えなかった。またたく間に、腹を越し、胸に及び、喉に迫った。もう一分もすれば、鼻も口も水につかって、呼吸を続ける為には、我々は泳ぎでもする外はないのだ。
「もう駄目だ。諸戸さん僕達は死んでしまう」
私は喉のさける様な声を出した。
「絶望しちゃいけない。最後の一秒まで、絶望しちゃいけない」諸戸も不必要に大きな声を出した。「君は泳げるかい」
「泳げることは泳げるけれど、もう僕は駄目ですよ。